ワキガの原因・仕組みを医学的知見をもとにわかりやすく解説

ワキガはアポクリン汗腺の分泌物が皮膚常在菌に分解されて生じる体質性の臭いです。不衛生が原因ではなく、遺伝的要因との関連が報告されています。仕組みと要因をわかりやすく解説します。

公開 更新
Conclusion

このページの結論

  1. ワキガ臭は「アポクリン汗腺の分泌物 × 皮膚の常在菌」で生じます
  2. 体質は遺伝的要因との関連が報告され、本人の不衛生や努力不足が原因ではありません
  3. 体質そのものは変えられませんが、適切なケアで臭いを抑えることはできます
  4. 湿った耳垢は体質傾向の手がかり。ただしそれだけでワキガと断定はできません
  5. 急な発汗の増加・夜間の大量の汗は別の原因の可能性。まず医療機関へ
ワキガ臭が発生する流れ 分泌物そのものではなく、皮膚上で分解される過程で臭いが強くなります。 ワキガ臭が発生する流れ 分泌物そのものではなく、皮膚上で分解される過程で臭いが強くなります。 1 体質

アポクリン汗腺が発達

2 分泌

脂質・タンパク質を含む汗

3 分解

常在菌が分泌物を分解

4 臭い

特有臭・黄ばみにつながる

清潔さだけの問題ではなく、体質と皮膚環境が重なって起こります。
ワキガ臭が発生する流れの図解

こんな人向け

  • ・耳垢が湿っていて気になっている
  • ・脇の黄ばみや臭いが気になる
  • ・なぜ臭いが発生するのか知りたい

ワキガとは?

ワキガ(腋臭症)とは、脇の下にあるアポクリン汗腺から分泌された物質が、皮膚の常在菌によって分解されることで生じる特有の臭いを指します。医学的には「腋臭症(えきしゅうしょう)」と呼ばれます。重症度や日常生活への支障があると医師に判断された場合は、保険適用で治療が行われることがあります。

参考データ: ABCC11遺伝子型の解析を行った研究(Nakano M, et al. 2009)では、湿った耳垢(湿性耳垢)と関連するABCC11遺伝子型は、腋臭症(ワキガ)との強い関連が報告されています。耳垢タイプは、ワキガ体質を考える際の参考情報のひとつとされています。

なぜ臭うのか?臭い発生のメカニズム

ワキガの臭いの正体は「アポクリン汗腺の分泌物+皮膚の常在菌による分解」の組み合わせです。

人間の汗腺には主に2種類あります。

  • エクリン汗腺:全身に分布。主に水分・塩分を分泌する「体温調節の汗」
  • アポクリン汗腺:脇・鼠径部・耳道などに集中。脂質やタンパク質を含む分泌物を出す汗腺

アポクリン汗腺から分泌された物質は、分泌直後はほぼ無臭です。しかし、この分泌物が皮膚常在菌(代表的な菌としてコリネバクテリウム属などが知られています)によって分解されることで、ワキガ特有の臭い成分が発生します。

また、これらの分泌物や代謝物が衣類に付着し酸化することで、黄ばみの原因になります。

臭いの強さには、アポクリン汗腺の量や粒の大きさが関係していると考えられています。また、ワキガ体質の方は、耳垢が湿っている・ワキ汗が多い(腋窩多汗症をともなう)・衣類が黄ばみやすい、といった特徴をあわせ持つことがあります。アポクリン汗腺は耳の中・乳輪・陰部にもあるため、それらの部位でにおいを感じることもあります(陰部のにおい(スソワキガ)についてはこちら)。

汗が出る3つのパターン

発汗には刺激の種類によって3つのパターンがあり、それぞれ関与する汗腺と部位が異なります。

  1. 温熱性発汗:運動や高温環境で全身のエクリン腺が活性化する、体温調節のための汗。
  2. 精神性発汗:緊張やストレスによる発汗・蒸れによって、臭いが気になりやすくなる場合があります。
  3. 味覚性発汗:辛い食べ物などで汗が増えることがあります。

耳垢と遺伝の関係

耳垢が「湿っている(ベタっとしている)」人は、ワキガ体質との関連があることが研究で報告されています。

これは、アポクリン汗腺の分泌に関係する「ABCC11」という遺伝子が関与しているためです。2006年の研究(Yoshiura et al., Nature Genetics, 2006)で、この遺伝子のタイプによって耳垢が湿型・乾型に分かれ、アポクリン汗腺の発達と関連することが報告されました。ABCC11遺伝子は優性遺伝に近い形式を示すため、家族内で体質が共通してみられることがあります。

耳垢タイプ傾向
湿った耳垢ワキガ体質との関連が報告されている
乾いた耳垢比較的、関連が弱い傾向

※ 耳垢タイプはあくまで関連が報告されている特徴のひとつであり、これだけでワキガかどうかが決まるわけではありません。

参考データ: 日本形成外科学会ほかの「腋臭症診療ガイドライン」では、日本人の約16%が湿型耳垢で、その約80%に腋臭があるとされることから、単純計算では日本人の10%程度が腋臭症と考えられるとされています。ただしこれは単純計算上の推定で、実際に受診する人の割合とは異なります。湿型耳垢の頻度には地域差が大きく、欧米・アフリカ系の集団では体質を持つ人が大多数とされています。

耳垢が湿っている方へ

湿った耳垢は、ワキガ体質との関連が報告されている特徴のひとつです。気になる方はセルフチェックも参考にしてください。

→ 3分でワキガをセルフチェック

臭いが強くなりやすい要因

ホルモンバランス

アポクリン汗腺はアンドロゲン(男性ホルモン)の影響を受けます。一般に思春期に発症し、20歳代ごろに最も強くなりやすく、その後は徐々に落ち着く傾向があるとされています。女性では月経前から月経時にかけて、臭いを強く感じられることもあります。

蒸れ・通気性

汗や皮脂がこもって蒸れると、菌が増殖しやすくなり、臭いが気になりやすくなります。通気性の悪い衣類や長時間の密着でも起こりやすくなります。

ストレスと緊張

緊張やストレスによる発汗・蒸れによって、臭いが気になりやすくなる場合があります。

食事・生活習慣

動物性脂肪・にんにく・タマネギ・アルコールなどは体臭に影響を与える可能性が指摘されていますが、個人差が大きく明確な因果関係は限定的です。※体質の根本原因ではなく、臭いの強さに影響する要因です。

よくある誤解

「不潔だから」ではない

ワキガは本人の不衛生や努力不足によるものではなく、遺伝的な体質に由来します。適切なケアで臭いを抑えることはできますが、体質そのものは本人の責任ではありません。

「汗腺の数が多いから」だけではない

「ワキガの人は汗腺の数が異常に多い」という説明を見かけますが、ワキガでは汗腺の数だけでなく、分泌物の性質や皮膚環境も関係すると考えられています。「汗腺の構造が特殊だから仕方ない」と諦める必要はなく、適切なケアで対処できます。

「太っている人=臭いが強い」とは限らない

体格と臭いの感じ方には個人差があり、単純な相関は明確ではありません。ただし、通気性の低下や蒸れによって菌が増殖し、臭いが強まる場合はあります。

なお、企業研究では、ワキ臭を複数のタイプに分類する試みも報告されています(医学的分類ではありません)。

当てはまる点が気になる方は、一度セルフチェックを試してみてください。

こんな場合はまず医療機関へ

以下に当てはまる場合、ワキガ・多汗症以外の疾患(甲状腺疾患・糖尿病・感染症・薬剤の影響など)が関与している可能性があります。市販品でのセルフケアよりも、先に医療機関での確認を優先してください。

  • 半年以内に急に発汗が増えた、または症状が急激に変化した
  • 睡眠中に大量の汗をかく(夜間多汗)
  • 全身的な発汗・体重変化・倦怠感など、他の症状も伴っている

→ 原発性と二次性多汗症の違い・分類を医学的に整理

ワキガの対策方法

ワキガの対策は原因と重症度に応じて選ぶことが重要です。

よくある質問

Q.ワキガは遺伝しますか?
A.ワキガは遺伝的要因との関連が報告されています。アポクリン汗腺のはたらきには「ABCC11」という遺伝子が関係していることが知られており、湿った耳垢の人はワキガ体質と関連しやすく、家族内で似た体質がみられることもあります。ただし、臭いの感じ方や症状の程度には個人差があります。
Q.ワキガと汗臭いの違いは?
A.ワキガはアポクリン汗腺由来の分泌物が皮膚常在菌に分解されて生じる特有の臭いです。一方、一般的な汗臭さはエクリン汗腺からの汗が蒸れや細菌によって生じるもので、性質が異なります。
Q.ワキガは自分でわかりますか?
A.嗅覚は同じ臭いに慣れる(順応する)性質があるため、自分では気づきにくい場合があります。耳垢のタイプ(湿っているかどうか)や衣類の黄ばみなどが、客観的な手がかりのひとつとされています。
Q.思春期に臭いが変化しますか?
A.思春期には男性ホルモン(アンドロゲン)の分泌が増え、アポクリン汗腺が活発になるため、臭いが気になりやすくなる傾向があるとされています。

参考文献・出典

一次研究・学会

  • Yoshiura K, et al. A SNP in the ABCC11 gene is the determinant of human earwax type. Nature Genetics. 2006.
  • Martin A, et al. A functional ABCC11 allele is essential in the biochemical formation of human axillary odor. Journal of Investigative Dermatology. 2010.
  • Nakano M, Miwa N, Hirano A, Yoshiura K, et al. A strong association of axillary osmidrosis with the wet earwax type determined by genotyping of the ABCC11 gene. BMC Genetics. 2009.
  • 日本形成外科学会・日本創傷外科学会・日本頭蓋顎顔面外科学会 編「形成外科診療ガイドライン7 体幹・四肢疾患」(金原出版, 2015)所収「腋臭症診療ガイドライン」(CQ1:有病率〔湿型耳垢16%×80%=約10%、推奨度C1〕、CQ2:アポクリン腺の量・大きさと腋臭の強さの相関〔C1〕、CQ3:遺伝・ABCC11〔推奨度B/C1〕、CQ4:身体的特徴〔湿型耳垢・腋毛・衣類の黄ばみ・腋窩多汗症の合併・耳/乳輪/陰部の臭い、C1〕、CQ5:思春期発症〜20歳代ピーク・月経前〜月経時の増強・動物性脂肪での増強〔C1〕ほか)

企業研究

  • 株式会社マンダム 汗とにおい総研「日本人のワキ臭は7タイプに分かれることを発見」(2006年〜の体臭研究)→ 公式ページ

本記事はアフィリエイトリンクを含む場合があります。掲載情報は情報提供を目的としており、医療行為の推奨・診断・治療を目的としたものではありません。気になる症状がある場合は医療機関にご相談ください。

最終更新日: | 掲載情報は随時確認・更新しています。気になる症状は医療機関へご相談ください。